こころとからだの健康

アルコールと上手に付き合う

<

12月に入り、また緊急事態宣言も解除となったことで、飲酒の機会が増える方もおられるかもしれません。
飲酒による不幸な事件、事故を減らすために何ができるか考えてみました。

ホーム転落の半数は飲酒が原因

西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)とビール酒造組合※は、お酒を飲みすぎたお客様によるホームからの転落防止に向けて、適正飲酒の推進によるホームでの安全を啓発する共同のキャンペーンを2021年度も取り組みを継続し、ホームからの転落防止を呼び掛けています。
国土交通省の発表によると、飲酒によるホームからの転落事故は全体の半数以上であり、酩酊状態でホームを歩くことの危険性を訴えています。

飲酒運転による死亡事故は、飲酒なしの9.4倍

また、最近のニュースによると、「2021/11 34歳医師が基準値を超えるアルコール摂取による事故により逮捕」「2021/6 児童5人死傷事故により逮捕 運転中に飲酒し居眠り」など記憶に新しいと思います。

飲酒運転による交通事故については、2007年6月には自動車運転過失致死傷罪を規定した刑法改正が行なわれ、さらに2007年9月から飲酒運転等の罰則が強化されたことで、2000年の26,280件をピークに減少に転じ、2007年には7,558件とピーク時の3割以下に減少しました。
しかし、一方で飲酒による悪質運転は絶えず、死亡事故率を飲酒有無別にみると、飲酒運転の死亡事故率は飲酒なしの9.4倍であり、酒酔い運転に至っては34.4倍と高く、飲酒運転による交通事故が死亡事故につながる危険性の高いことが示されています。

警視庁HPでは『アルコールの影響により、正常な運転が困難な状態で運転して人を死傷させた者は、危険運転致死傷罪の適用を受け、最長20年の懲役を科せられます。』『飲酒運転は自分の意思!飲酒して運転することに「つい」や「うっかり」はありません。』と警鐘を鳴らしています。

「節度のある適度な飲酒」を目指しましょう

厚生労働省は「健康日本21」の中で「節度ある適度な飲酒」(健康日本21(第一次))とともに「多量飲酒」(健康日本21(第二次))にも明確な定義を与えています。
「多量飲酒」とは「1日平均60g以上の飲酒」です。アルコール関連問題の多くはこの多量飲酒者が引き起こしていると考えられています。

飲酒行動の分布

厚生労働省「飲酒のガイドライン」によると、「通常のアルコール代謝を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20gである」と説いています。
では、純アルコールで20g(2ドリンク)とは、どのくらいの量なのでしょうか?
通常、純アルコール量は、グラム(g)で表わされ、アルコールの比重も考慮して以下の計算式で算出します。

酒の量(ml) × アルコール度数/100 ×0.8(アルコールの比重)= 純アルコール量(g)
例:アルコール度数5%のビールロング缶1本(500ml)に含まれる純アルコール量は、
500ml × 5/100(=5%) × 0.8 =20gとなります。

 

アルコール5%のビールでいえば、ロング缶や中瓶1本、15度の日本酒1合、5%酎ハイ350ml1本、43度のウィスキーダブル1杯程度と言われています。更に、同じ体重であったとしても女性は臓器障害を起きしやすいため、摂取量を減らすことが推奨されています。

アルコールが抜けるには案外時間がかかります

例えば、あなたがビール(500ml)1本のアルコール(適正量)を飲んだとしましょう。あなたが男性(68kg)ならば消化分解まで3時間かかり、女性(53kg)であれば、4時間かかることになります。
アルコールの消化分解時間は、飲んだ量にほぼ比例しますので、もし、体重70kgの人が5%の缶酎ハイ350mlを4本飲むと、純アルコールで56gになります。体内でアルコールを分解するには、11時間以上かかることになります。
つまり、夜11時に飲み終えても、朝の10時までアルコールは残っていることになります。

「案外時間がかかる」「意外だった」と感じられた方もおられるかもしれません。
そう感じられた方がおられたら、ぜひ、飲酒量や翌日の予定など考慮し、安全な飲酒を心掛けていただけたらと思います。
アルコールが分解される前に眠ってしまうと、更に消化に時間がかかりますので、「寝たから大丈夫」とハンドルを握るのは大変危険な行為です。
また寝酒は、酔い覚めや排尿で中途覚醒を起こすなど、睡眠の質を下げることにも繫がりますので、注意が必要です。

ヒトとアルコールの長い関係

ヒトとアルコールの関係はとても古く、1200万年前に類人猿が突然変異でアルコール分解遺伝子(ADH4遺伝子)を手に入れたことから始まったことが研究により明らかになっています。世界遺産ギョベックリ・テペで発掘された出土品からヒトは1万2000年前には酒を造っていた可能性もあると考古学者のローラ・ディートリッヒさんは考えています。大神殿を建築するために集団の結束を強くする一つの方法として「宴」をしていた可能性があるということです。さらに5000年前の古代エジプトでは、ビールが労働者の賃金として支給されるまでになっていたというのですから驚きです。(NHKスペシャル 2020/2/2)

アルコールは、適正量を守っていれば、社会生活を営む上でも効用があります。またストレスを緩和し、心を和ませると言われています。
酒を生涯の友として安全に嗜むために、アルコール健康医学協会では、飲酒に関する「10か条」を作成しています。参考になさってください。


1.談笑し楽しく飲むのが基本です

2.食べながら 適量範囲でゆっくりと
3.強い酒 薄めて飲むのがオススメです
4.つくろうよ 週に二日は休肝日
5.やめようよ きりなく長い飲み続け
6.許さない 他人(ひと)への無理強い・イッキ飲み
7.アルコール 薬と一緒は危険です
8.飲まないで 妊娠中と授乳期は
9.飲酒後の運動・入浴 要注意
10.肝臓など 定期検査を忘れずにしない させない 許さない 20歳未満飲酒・飲酒運転!
出典:アルコール健康医学協会ホームページより

 

最後に、驚きの研究結果についてお伝えします。
「ノンアルコール酒」の効果です。
最近行われた実験で、「人間はノンアルコールでも“酔いに似た快楽”を味わえる」ことが分かったそうです。
「本物と遜色のない味わいを持っていることで、ノンアルコール酒でも本物のお酒を飲んでいるような疑似体験をさせてくれる。『楽しさ』という記憶が、ノンアルコール酒を飲んで起こる。」(龍谷大学 山崎英恵 准教授)

「何時まで飲むか」「何をどの程度飲むか」その時々の状況に応じて、上手にお酒と付き合って頂ければと思います。

 

筆者:産業カウンセラー
2021/11

参考:厚労省「e-ヘルスネット」
NHKスペシャル 飲みたくなるのは“進化の宿命”!?酒の知られざる真実

資料ダウンロード全27ページパワハラ防止法に対応!体制づくりに役立つ資料を無料進呈資料ダウンロード全27ページパワハラ防止法に対応!体制づくりに役立つ資料を無料進呈