研修

新入社員のためのオンボーディング(組織社会化)

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オンボーディングとは

オンボーディング「on boarding」は、船や航空機に乗り込む「on board」が語源です。新しい人が新たな環境に早く慣れるよう支援する意味で、人事用語として使用されるようになりました。
オンボーディングの取り組みは、新たに採用した人すべての人が対象になります。
入社してから取り組む様々な施策、OJTやメンターメンティ制度などのサポート体制、研修などが含まれ、配属後も含めた継続的な人材育成であることが特徴です。

なぜ、オンボーディングが注目されているのでしょうか

少子高齢化による労働人口の減少が進み、若手人材の確保が難しい中、若手人材の離職率の高さも人事部にとっては苦労となっています。
事業所規模の新入社員離職率をみると、中小企業など会社規模が小さいほど離職率が高くなる傾向があり若手社員の人手不足は深刻な経営課題です。

一度離職が発生すると、新たに採用をかけなくてはなりませんが、有効求人倍率は、令和2年1月時点で1.49倍と売り手市場の状況であり、採用活動が長期化すれば「求人広告への掲載費用」や「採用担当の人件費」が余分に掛かります。
採用コストを考えると、入社した社員へのサポートは重要な課題であることが分かります。(厚労省令和3年10月22日公表データ)
離職のリスクは中途入社の社員にもあてはまり、即戦力として採用したにもかかわらず新しい組織でのアイデンティティの再構築ができずに退職を余儀なくされるケースもあります。中途採用者へのオンボーディングも離職予防には大切です。

労働政策研究・研修機構:【資料シリーズNo.236【第5章】『若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状「平成30年若年者雇用実態調査」』図表5-2-2によると、入職から1年未満で早期に辞めた理由として、「人間関係が良くなかった」「仕事が自分に合わない」が上位でした。
また、男性では離職理由に「健康上の理由」を挙げた割合が、15.9%、女性では21.2%と3年以上勤務の退職者と比べると高く、過酷な労働条件や厳しい人間関係などを背景にしたメンタル不調との関係が考えられるとしており、メンタルヘルスへの配慮も必要なことが示唆されると考察しています。

オンボーディングの目的とは

新卒や中途を問わず、企業は新入社員に対し「早く戦力になって欲しい」「長く勤務してほしい」と期待します。この2つを実現させるのが、オンボーディングの主な目的です。

新入社員の組織社会化を促進し、立ち上がりを早めたい
一般的に新入社員がパフォーマンスを上げるには、半年から1年程度かかるといわれています。しかしリアリティショックを経験したり、組織社会化が上手くいかず、上記の理由などにより1年未満で退職を選択したり、慣れるまでに時間がかかる場合も多くなっています。
オンボーディング施策は、リアリティショックを防ぐための入社前説明や人事との関係性の構築、入社後の研修制度やOJT、off-JTといった組織的な取り組みや、メンターメンティ制度、1オン1ミーティングなどのサポート体制を含みます。

新入社員の離職を予防し、エンゲージメントを高めたい
オンボーディングがうまくいけば、新入社員が組織の中で持ち味を生かすことができ、力を発揮しやすい環境がうまれ、パフォーマンスが向上します。
また成果を実感できるようなスモールステップで課題に挑戦できるサポートを行い、キャリア形成のイメージを抱きやすくすることでエンゲージメントも高まります。新入社員へのメンタリングを行い、それぞれのステージに合わせた目標設定や納得のいく評価がなされれば、上司や組織への信頼感が生まれ、予想外の離職はある程度抑制できるでしょう。

サポートを提供する社員の成長も期待したい
オンボーディングを機能させるには、育成側のスキルも必要です。オンボーディングを組織全体で行うことで、サポート役の社員は、新入社員の個々の状況や状態を把握するコミュニケーションスキルはもちろんのこと、ティーチング、コーチング、フィードバック、メンタリングなどのスキルの向上に繋がります。よい指導者が育ち、新入社員とチームや組織への橋渡し役となることで、チーム全体の心理的安全性も高まるでしょう。

<オンボーディング 取り組みの具体例>

コミュニケーションの活性化(在宅勤務を導入している企業様にもぜひ)
1.ちょっとした隙間時間をあえて作り、雑談や声掛けを行う「隙間コミュニケーション」で活性化
2.飲み会や食事会、歓迎会など在宅でもできる工夫をした「イベントコミュニケーション」の開催
3.自分たちのチームだけではなく部門を超えた「横、斜めの連携コミュニケーション」をサポート
4.相手の心情に添う「寄り添うコミュニケーション」
5.チームで楽しめ、他者理解、リフレーミングを醸成する「Good(Happy)&New」を導入
(弊社、HRコラム 職場のコミュニケーション~楽しく話していますか?~ 参照)
など、楽しく継続していくことで孤立の予防、コミュニケーションの活性化に繋がります。

育成担当者の1オン1ミーティング、動機づけ、メンターメンティ制度に活かせるスキルとして
1.仕事や態度、心情を理解し支えるメンタリングスキル
2.不足する業務スキルを適切に指示、教育ができるティーチングスキル
3.自ら考え、学んでいける力を構築するコーティングスキル
4.新入社員の達成課題を可視化し、納得がいく評価ができるフィードバックスキル
5.メンタルヘルスの向上のためのカウンセリングスキル
など

組織としての取り組みとして
1.リアリティショックを予防する入社前の説明会、相談体制、マニュアルの作成、入社後のOJT、off-JT、1オン1ミーティングなどサポート体制
2.Z世代が求める心理的安全性の高いチーム作り
3.何を、誰に質問すればよいかなどのネットワーク支援
4.メンタルヘルスを含む相談窓口
5.ステージや目的に応じた研修、教育

まとめ

多様化する社会背景の中、Z世代が求める会社像、上司像を理解し、組織もこれまでの常識やバイアスを修正した新たな取り組みが求められるようになりました。ニューノーマルに適応する新たなコミュニケーション方法を取り入れ、新入社員が孤立することなく組織の中で力を発揮できる体制づくりをして頂けたらと願います。

 

筆者:産業カウンセラー、公認心理士

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