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部下の育成に心理学を応用する Part8 ~ジョハリの窓(自己理解・他己理解)~

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「ジョハリの窓」とは?

みなさまは「ジョハリの窓」ということばを聞いたことがあるでしょうか。
ジョハリの窓(Johari Window)とは、サンフランシスコ州立大学の心理学者、ジョセフ・ルフト氏とハリー・インガム氏の共同研究で発表され、それぞれの名前を取って「ジョハリの窓」と名付けられました。
心理学で使用される自己分析に使用する心理学モデルのひとつです。

「ジョハリの窓」目的と効果

人は自分を理解しているようで案外分かっていないこともあるものです。
「自分はこういう人」という自己イメージが、実は他者には違うように映っていることもあるでしょう。

「ジョハリの窓」は4つの窓(開放、秘密、盲点、未知)の項目に分けて、性格的な特徴を当てはめ、自分の認識している性格と他人が認識している性格にズレがないか、見つめなおし、自身の成長に繋げたり、表現や言動を修正し、対人ストレスの軽減に役立てるなど、自己研鑽に繋げることができます。

「ジョハリの窓」の実践方法について

「ジョハリの窓」は互いの性格をよく知るメンバーで行うことがポイントです。チームなどのメンバー間で親密性を高めたり、自己開示の促進、自己理解、他己理解に活用するとよいでしょう。

「ジョハリの窓」の性格特性項目の例(予め決めておきます)
なお、ネガティブな言葉はリフレーミングして使用します。

①頭が良い ②発想力がある ③段取り力がある ④向上心がある ⑤行動力がある ⑥表現が豊か ⑦話し上手 ⑧聞き上手 ⑨親切 ⑩リーダー資質がある ⑪空気が読める ⑫情報通 ⑬根性がある ⑭責任感がある ⑮プライドが高い ⑯自信家 ⑰頑固 ⑱真面目 ⑲慎重 ⑳大胆

上記以外にも、・ユーモアがある ・礼儀正しい ・交渉が上手い など職種に合わせた項目を入れても良いでしょう。

 

「ジョハリの窓」実施方法
1.参加者を複数人集めます(4人から8人程度を推奨)。人数によりますが概ね30分から45分程度で終了
2.参加者全員に記入用紙と性格特性項目が記載された用紙、集計用紙を配布します
3.まずは参加者全員が、自分自身の性格に当てはまる「性格特性項目」の番号を全て書き出します(集計まで人には見せない)
4.次に他の参加者名の用紙にその人に当てはまる「性格特性項目」の番号を全て書き出します。つまり5名で実施する際は、人数分の性格項目を記入することになります
5.全員がすべて書き終えたら、自分の名前の用紙を他の参加者から集めます
6.集計用紙に集計し、それぞれの結果を共有しましょう。それぞれの認識を話し合い、フィードバックを貰いながら互いの理解を深めます

「ジョハリの4つの窓」について

ここからは、「4つの窓」について、解説していきます。

1.自分と他人が記入した「開放の窓」open self
自分と他人両方が把握している性格的な特徴です。
自身でも自覚し、他人にも同様の印象を持たれる自分を表す重要な性格のポイントでしょう。「開放の窓」に記入される項目が多いほど、自己開示性が高いとも言えます。

2.自分だけが記入した「秘密の窓」hidden self
他の人が知らない自分だけが自覚している特徴です。他人には気づかれない弱い特徴であり、他人は意識しなくても自分だけが意識している性格であるので、認識のずれを意識したり、自分の理想像、なりたい自分などを考えるきっかけになります。

3.他人だけが書いた「盲点の窓」blind self
自分では認識や意識せず、他人だけが気付いたり、認識しているあなたの特徴です。あらたに意識したり、自己理解を進めるためには大切なポイントになります。
他人から見た客観的視点であるため、例え自分の期待に反した結果であってもしっかり受け止めます。

4.誰も書かなかった「未知の窓」unknown self
自分も他人も選択しなかった未知の性格です。本当に当てはまっていないかを振り返ったり、伸ばせる可能性についても考え、能力開発、自己成長に役立てましょう。

集計用紙に記載 (例 Aさんの場合)

このシートは、Aさんの集計結果を記載したものです。

「開放の窓」をみると、「聞き上手」「向上心」「責任感」「親切」「空気が読める」等々が、自他ともに共通認識でした。Aさんの人となりをイメージできますね。
Aさんは「開放の窓」の項目が多く、自身と他者に共通認識をもっている性格特性があることが分かります。自己開示性が高いようです。

「秘密の窓」をみてみましょう。
Aさんご自身は、「リーダー資質」があり、「段取り力」があり、「根性がある」と自覚しているものの、他者はそのようには見ていない結果です。

「盲点の窓」をみてみましょう。
Aさんが自身で意識していなかった性格です。Aさんは、自身を「話し上手」と意識しておらず、また「表現力」や「情報通」であることも意識していなかったことが分かりました。周囲はどのような場面でこの特性を感じたり、意識をしているのでしょう。話し合ってみることで新たな自分との出会いになるかも知れません。

更に、「未知の窓」領域を今後どのように育てていくのか、秘められた才能への気づきに繋がっていくかも知れません。

まとめ

「ジョハリの窓」理論では、「開放の窓」が広がっていくほど良質なコミュニケーションが築かれると言われています。
「ジョハリの窓」を実施することで、自身で性格特性として挙げた項目が認識されていなかったり、他者からはあると思われている性格特性が自分では意外だったり、新たな発見につながることがあります。
未知の窓に書かれた性格特性が潜在的には存在する可能性もあることでしょう。

こうした取り組みは、自己理解を促進し、また組織のコミュニケーションを活性化し、1オン1ミーティングにも活かせます。
立場やチームメンバーが変わることで、役割性格が身に付いたり、印象が変わることがあります。
1度だけではなく、それぞれの窓を意識した開かれたコミュニケーションを行い、次に時間を置いて実施することで、更に自己理解、他己理解が促進されます。チームメンバー同士の相互理解にもお役立ていただければと思います。

※コロナ下において、在宅勤務をされる企業様やフレックス制度を導入されておられる企業様もあります。実践は、リモートでも十分可能です。
メンバーを対面で集めることが困難な場合は、ZoomやLINE、アプリ機能を使用し、リモート開催をなさると良いでしょう。

 

筆者:産業カウンセラー 公認心理師
2022/05

参考:心の教育プログラム:
http://www.hyogoc.ed.jp/~kenshusho/07kokoro/H23/kokoronokenkou.pdf
『ジョハリの窓 人間関係がよくなる心の法則』 久瑠あさ美 朝日出版社 2012年

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