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部下育成に心理学を応用する Part9 ~固定電話は苦手?~

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相談室で「新入社員が固定電話に出ない」「部署の電話が鳴ると固まってしまう」などの相談が寄せられるようになり数年が経ちます。

デジタルネイティブと呼ばれるZ世代は物心付いたときからスマホに馴染んでおり、電話は身近な存在ですが、どうやら固定電話とは全く違う存在のようです。

公衆電話離れ、固定電話離れ

今や公衆電話の設置数はピーク時から1/5に減少し、「緊急時の保険的通信手段としての役割」となり、正しい使用方法や料金を言える人は少なくなりました。
NTT東日本の調査では、公衆電話の使用方法が分からない小学生は85%となり、使用方法を講習するという社会状況になっています。
総務省が2020年5月に発表した「通信利用動向調査」によると、固定電話の普及率は20代世代で5.1%、30代世帯では19.6%と低く、固定電話離れが進んでいることが分かりました。

こうした固定電話離れが進む中、若い世代にとって固定電話は「必要性を感じられない」ものになりつつあります。
電話代行サービスfondeskが2021年3月に公表した「職場の電話対応の実情」調査によると、社会人の62.8%の方が会社宛ての電話を不要と感じたことがあり、66.3%の方が会社宛ての電話を受けることに対して業務の中断や時間消費にストレスを感じているという実態が判明しました。

固定電話と携帯電話の違い

新入社員にとっては、電話はもはや個人で所有をするものであり、所有する携帯電話は、その発信相手も受信相手も既知の人物です。携帯電話には未知の人からの架電は少なく、掛かってきたとしても番号通知で確認ができ、その時の気分で対応せずに済ませることが可能です。
既知の人物との交信は、気を遣うことなく安心して対応ができ、またLINEやSNSでの返信も可能です。不意打ちは最小限であり、侵襲性も少ないツールと言えます。

企業内における電話対応は、個人所有の電話と大きな違いがあります。
業務中に上司から「電話に対応して」と言われたときにどのような反応になるのでしょう。

こうした反応は、固定電話未経験者にとっては、特別なものではなく、実に自然なものです。企業はこのような反応を理解した上で、丁寧な教育を実施していく必要があります。

対応力を上げるには

それでは、こうした不安や緊張を軽減し、修正するには、どうしたらよいでしょう。

1.電話対応のマニュアルを作成し、メモの取り方の教育、確認事項(何時に、誰が、誰に、どのような要件で、どのように)など、落ち着いて対応ができるよう実践的な講習を行いましょう
2.モデルになる社員の実際の対応を見学してもらいましょう
3.ビジネス敬語の使い方など、マナー研修を取り入れましょう
4.自分たちのチームだけではなく部門を超えた「横、斜めの連携コミュニケーション」をサポートしましょう
5.周囲は新入社員の心情に添う「寄り添うコミュニケーション」を醸成し、困ったとき、分からないことがあるとき、失敗したときなど、どのような心情でも相談ができる心理的安全性が高いチームつくりを進めましょう

会社への電話は、お互いの顔が見えないことから年齢も性別も分かりません。ましてや新入社員が対応しているなど相手は知る由もないため、会社の代表として対応する必要がある難しいツールです。自信をもって対応ができるまで根気よく教育をしていきましょう。

新入社員の組織社会化を促進するためには、丁寧なサポートが必要になります。「手間暇がかかる」というマイナスな受け止め方ではなく、立ち上がりを促進し、結果的には組織の一員としての実力アップやリアリティショックのサポートに繋がるプラス面を認識することが大切です。

 

筆者:産業カウンセラー 公認心理士

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