こころとからだの健康

メンタルヘルス ~サードプレイスをみつける~

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「サードプレイス」という言葉を聞いたことがおありでしょうか?
「第三の場所」とも訳され、最近では車のコマーシャルにも登場したり、カフェのHPでもサードプレイス体験としての場の提供を呼び掛けたりしています。


 

サードプレイスとは?

「サードプレイス」とは、米国の社会学者であるレイ・オルデンバーグ氏が著書『ザ・グレート・グッド・プレイス』で「現代社会において家でも職場でもないとびきり居心地の良い場所が重要」と提唱したものです。

三番目の場所であれば、当然、第一の場所と第二の場所もあります。少し触れておきましょう。

ファーストプレイス(第一の場所)は、家庭、自宅であり、衣食住の場所です。
プライベートな空間ですし、ご家族があれば、家庭に対して責任が生じ、家事や育児などやるべきこと、守らなくてはならないことなどがある場所でもあります。

セカンドプレイス(第二の場所)は、職場や学校など一日のうちで長くいる場所です。
経済活動や学びの場所であり、公共性が高く言動には責任や忍耐が求められる場所でもあります。

サードプレイス(第三の場所)について、提唱者のオルデンバーグ氏は、心地の良い場所であり、責任や忍耐で訪れるのではなく、その場所に対する特別な思いがあり、行きたいから行く場所。コミュニティライフの“アンカー”ともなるべきところで、より創造的な交流が生まれる場所、としています。

サードプレイスの特徴とは

オルデンバーグ氏は「サードプレイス」の特徴として著書の中で8つの項目を挙げています。
・中立領域
・平等主義
・会話が主たる活動
・アクセスしやすさと設備
・常連・会員
・控えめな態度・姿勢
・機嫌がよくなる
・第2の家

「サードプレイスでは会話が主な活動であり、訪れる人々の差別をなくし、社会的平等の状態にする役割を果たす。またサードプレイスの個性はとりわけ常連客によって決まり、遊び心に満ちた雰囲気を特徴とする。それは家庭とは根本的に違う類の環境だが、精神的な心地よさと支えを与える点が、良い家庭に酷似している。」(オルデンバーグ、2013)

サードプレイスの考え方が多様化

現在では、サードプレイスの研究は様々行われており、オルデンバーグ氏の提唱したサードプレイスを「コミュニケーション型」個人の作業を中心に行うサードプレイスを「プライベート型」と分けたり、マイスペースや自分たちの憩いの場という性質が強い「マイプレイス型」とした新しい定義も出てきています。
日本人の性質には、「コミュニケーション型」より、「プライベート型」や「マイプレイス型」の方がより馴染みやすいとも言われています。

コロナ下でのサードプレイス

新型コロナ感染症の拡大で社会生活に制約が求められるようになり2年が経ちました。これまでサードプレイスとして機能していた趣味のサークルやボランティアの活動、コミュニティが失われたり、ジムや運動施設の利用を制限された方もおられることでしょう。リラックス、リフレッシュの場が少なくなることは残念なことです。

自分に合った「サードプレイス」を見つける

こうしたニューノーマルが求められる今だからこそ、改めて自分のためのサードプレイスを見つけ、心地よい時間を楽しみ、セルフケアに役立てて頂ければと思います。例えば、

●カフェ
仕事帰りや地元で気楽に立ち寄れるカフェを捜す。本を読んだり、勉強をしたり、道行く人を眺めたり、音楽を楽しんだりしてリラックス。

●ウィンドーショッピング
季節で変化するショーウィンドウを眺め、馴染みの店の店員さんと気楽な会話を楽しむ。本屋やCDショップ、ネットで買えるものでも時には気分を変えて手に取り感触も楽しみましょう。

●街歩き
好きな街並みはありますか?
日本には四季があります。季節で変わる気温を肌で感じ、風にあたり、お日様を楽しみ、ベンチに座って道行く人を眺めたり、図書館などに立ち寄ったり、自由に過ごしてリフレッシュしましょう。

●何かを学ぶ
知りたいこと、スキルを上げてみたいこと、これまでやってみたかったことはありませんか? 同じ興味を持つ人との新たな関係性が築ける可能性があります。

●働く場所、働く時間を再構築してみる
自宅でもない、職場でもないサテライトオフィスやシェアオフィス、コワークスペースを利用し、環境、通勤経路を変えることで気分も変わります。職場以外の人たちとの交流が生まれることでコミュニケーションが活性化します。

●ウィズコロナ、アフターコロナを考える
徐々に感染リスクが収まり人と集まれるようになった時を想定し、地域の活動やのボランティアへの参加をイメージし準備します。また、これまで中断していたスポーツ施設の利用や趣味のサークルなど、安全性、立ち寄りやすさ、心地よさなどを見直し、再開についての見直しも行います。

筆者の知人は、半地下の自宅の駐車場をサードプレイスとして活用し、小型冷蔵庫やネット環境を整え趣味に興じ、時に車好きの友人と集まり対話を楽しんでいます。

また、同僚Aはウィンドーショッピングを楽しみ、ネットショッピングで購入する前に実際に店舗を訪れ、靴や服の肌さわりや履き心地を試しているそうです。

同僚Bは、通勤経路にお気に入りのカフェを見つけ、自宅に戻る前に一日の振り返りを行い、気持ちの切り替えをしたり、読書をしています。
顔なじみの店員さんがいて、しがらみがなく、小腹が空いたらちょっとしたおやつも食べられ、椅子の座り心地もよい。お気に入りのサードプレイスを見つけたようです。

マイプレイス型のサードプレイスを見つけるポイントは、心の拠りどころになり、単調な毎日の中で楽しみを見つけられること。気軽に活用ができ、その場に身を置くことで気分がよくなること。肩書や責任と離れられ、素の自分として居られること。

あなたのサードプレイスをみつけ、活用してみましょう。

 

 

筆者:産業カウンセラー 公認心理師

参考:参考:サードプレイスの概念からみたカフェの心地よさに関する研究 | 奈良県立大学 研究報告第8号
レイ・オルデンバーグ著 忠平美幸訳(2013)
『サードプレイス:コミュニティの核となる「とびきり居心地の良い場所」」みすず書房

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