こころとからだの健康

「女性活躍」Part5 ~女性の健康課題への取り組みは進んでいますか?~

<

労働力人口総数に占める女性の割合は44.6%(2022年調査)で過去最高!

働く女性の割合が44.6%と過去最高になりました。
女性労働者が増加する中、日本における女性の管理職(課長相当職以上)割合は、僅か14.7%(※1 厚生労働省 令和2年度版「働く女性の実情」)です。

世界経済フォーラムが発表している「ジェンダーギャップ指数」2022年度版で日本は146か国中116位、主要7か国では最下位となり、男女平等からはまだまだ遠い国です。

女性管理職の少なさが男女賃金の格差を生んでいる要因とも言われ、政府は2003年に「2020年までに指導的地位の女性割合を30%にする」ことを目標に「202030」を掲げましたが、取り組みは非常に厳しく、2023年の現在も未だ達成に至っていません。

2020年に改めて「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性割合を30%となるよう取り組みを進める」とし、改めて「203030」を定めました。

「30%」の意味
政府が掲げる「30%」目標の根拠は、ハーバード大学ロザベス・モス・カンター氏が提唱した「黄金の3割」理論に基づいています。

集団の中のマイノリティは、少数派ゆえに力が発揮できないことは知られています。
「30%」はこの少数派であるマイノリティが、少数派でなくなる必要最低限の割合と言われ、組織の中でのマイノリティの割合が3割になると組織全体の文化が傾くという理論です。
そして更に、35:65の割合になるとマイノリティが連携を組み、組織文化に変化をもたらします(※2 Kanter, 1977)。

女性の健康課題は、個人の問題ではなく組織、社会の課題

2019年に経済産業省がまとめた「健康経営における女性の健康の取り組みについて」では、月経の随伴症状による労働損失は、4,911億円とされ、本人がつらいだけではなく、企業や社会にとっての損失が大きいことが分かりました。

こうした調査から、経済産業省は女性特有の健康課題を「女性個人の問題」とせず、女性の健康支援を「健康優良法人」の必須条件としました。
今後、女性の健康課題に関する取り組みを「特に行っていない」企業は健康経営優良法人に「不適合」となります。

女性の健康課題とは?

女性の健康課題の上位に挙げられるのは、「毎月の月経」による随伴症状でしょう。

男女共同参画局が行った調査「月経に関する不調」※3

こうした症状がある期間、働くうえでどのような影響がでるのでしょう。

「女性の健康支援とフェムテック」※4 (働く女性2000人調査)によると
「仕事の効率が落ちる」75.4%
「ミスが増える」27.8%
「つらくて休む」24.2%
であり、3/4の人にプレゼンティーイズム、1/4の人にアブセンティーイズムを引き起こしていたことが分かります。

ヘルスリテラシーを高める

男性管理職が85%を占める日本社会において、こうした「女性の健康課題」について、女性本人のヘルスリテラシー向上は勿論のこと、男性の「女性課題」に対するリテラシーを高めることが大切です。

日本においては性に関する話題をタブー視する風潮があり、月経の話題を口にすることに抵抗を感じる方は男女問わずおられるようです。
けれども、ヘルスリテラシーを高めることで、月経不調時などに仕事のパフォーマンスが下がる割合が減ったという調査結果もあります。

随伴症状を感じたら、一人で抱えない

20代では8割以上、30代では7割以上の女性が、月経痛などの月経に関する何らかの不調を抱えています。
正常な月経と月経異常の種類、月経に伴う疾患への理解を深め、辛い腰痛や腹痛などの痛みや体調不良、精神不安など、我慢せず、躊躇わず病院へ受診し相談しましょう。

生理休暇とは?
「生理休暇」とは、労働基準法第68条で定められた制度です。
症状に応じて時間単位、半日単位と症状に合わせて取得することができます。
法律上は給与の支払いについて規定はないため、生理休暇を「有給」としている企業割合は29%程度ですから、就業規則などで予め調べておくと良いでしょう。

また、取得期間に関しても規定がないため、上限が何日なのかは企業によって違いがありますので、こちらも予め調べておくと良いでしょう。

女性活躍を推進する為には、多くの課題があります。

女性特有の健康課題は、女性ホルモンの変化により年代で異なります。
生涯における月経回数の増加は、様々な疾病のリスクとなっていることはあまり知られていません。
個人差が大きく一律の対応が難しいため、一人ひとりの課題を知り、丁寧なサポートが必要になります。

健康課題の影響は、単にフィジカルだけではなく、メンタルヘルス、キャリアにも大きな影響を及ぼします。
今後も様々な観点から女性活躍について考えていきたいと思います。

 

参考:
※1 厚生労働省 令和2年度版「働く女性の実情」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/20.html
※2 Kanter, R. M. (1977) Men and Women of the Corporation. Basic Books: New York.
※3 男女共同参画局 月経に関する不調
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-38.html
※4 「女性の健康支援とフェムテック」米川瑞穂編著 日経BP 総合研究所 メディカルへルスラボ

 

筆者:セーフティネット産業カウンセラー、公認心理師

資料ダウンロード全27ページパワハラ防止法に対応!体制づくりに役立つ資料を無料進呈資料ダウンロード全27ページパワハラ防止法に対応!体制づくりに役立つ資料を無料進呈