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「ニューロダイバーシティ」という考え方を知ろう

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これまで定型の発達を求めてきた日本において、自閉スペクトラム症(ASD)を持つ人々にとり、暮らしにくい社会であったように思います。
こうした定形発達にあたらない人の特性を認め、多様な人材として生かそうとする動きが始まっています。

ニューロダイバーシティという概念について

ニューロダイバーシティ(Neurodiversity、神経多様性)とは

Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)という2つの言葉が組み合わされて生まれた言葉です。
1990年代に生み出され、主に自閉スペクトラム症(ASD)者の権利擁護の中で広がりました。「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方を指します。

自閉スペクトラム症、ADHD、LDの捉え方を変える

ニューロダイバーシティは、特に自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)といった発達障害において生じる現象を、能力の欠如や優劣ではなく、『人間のゲノムの自然で正常な変異』として捉える概念です。

自閉スペクトラム症、ADHD、LDの特性とは

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)は身体的な兆候が少ないことから、「見えない障がい」と言われています。

ASDとは
主に社会的なコミュニケーションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある等、多種多様な障がい特性のみられる発達障害のひとつです。この障がい特性により、日常生活や社会生活において困難さを感じることがあります
(日本自閉症協会HP)

ADHDとは
発達水準からみて不相応に注意を持続させることが困難であったり、順序立てて行動することが苦手であったり、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こっている状態
(国立精神・神経医療研究センターHP)

LDとは
基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すもの
(文部科学省 学習障害の定義)

経済産業省の取り組み

経済産業省経済社会政策室では、特に先行研究でその特定能力との親和性が報告され、政府としても人材確保が喫緊の課題となっているデジタル分野にフォーカスし、当分野において企業が「ニューロダイバーシティ」を取り入れる意義とその方法論を取りまとめました。
(出典:経済産業省「ニューロダイバーシティの推進について」より)

海外で進む取り組み

海外の大手企業では積極的に取り組みが進む

自閉スペクトラム症の特性とデジタル分野との親和性の高さにいち早く気が付いたのは、デンマークのスペシャリステルネ社でした。その業務の品質の高さはハーバードビジネススクールで紹介され、SAP社やHPE社、マイクロソフト社など世界的なIT企業が人材の採用を始めました。

現在では、グーグル社とスタンフォード大学がパートナーシップを結び、神経多様性を持つ人々の能力を尊重し、アイデンティティと日常生活のスキルを向上させる文化の確立を目指しています。

スペシャリステルネ社の思想 「タンポポの原則」

「タンポポは均一な芝生の上では厄介な雑草、しかし、実は栄養、ヒーリングなどの効果があるハーブでもある。タンポポを雑草とするか、ハーブとするかは、タンポポではなく、私たちの知識と理解次第である」

この均一性を求めない新しい雇用の考え方「タンポポの原則(ダンデライオン・プリンシバル)」をスペシャリステルネ社は広めています。
それぞれの個性を尊重し、生かすことに着目したマネジメントです。

この人材マネジメントにより、これまで活躍の場に恵まれなかった発達の凸凹がある人、障がいのある人など多様な人たちの社会参加、採用が可能になります。

未開拓の人材として着目

自閉スペクトラム症の方は、世界で推定7,000万人と言われ、約8割の方が就業しておらず、また能力以下の不本意な労働環境に身を置いている現実があります。

発達障害人材の活用機会が限られていることによる経済損失は、米国では数十兆円とも言われています。
その埋もれた人材をに対して、特性に合った配慮や支援を提供することで、能力を引き出し高いパフォーマンスを発揮することが可能になり、IT人材のブルーオーシャンとして注目されています。
(出典:イノベーション創出加速のためのデジタル分野における「ニューロダイバーシティ」の取組可能性に関する調査)

日本の発達障害人口

厚生労働省の2016年調査では、医師から発達障害と診断を受けた人は48.1万人いると推計されました。2011年調査では31.8万人でしたから、この5年で1.5倍に増加したことになります。
また、生活のしづらさを抱えながら、医師の診断を受けていない人もいるでしょうから、実際にはもっと多くの当事者がおられると思われます。

診断を受ける人が増加した理由については、以前は「くせの強い人」「こだわり行動が大きい人」「場の雰囲気が読めない人」と性格の偏りと思われていた人が、実はASD(自閉スペクトラム症)の症状だったことが広く知られてきたことにあるのではないでしょうか。

ASDの研究が進み、メディアなどを通じてASDの理解が促進されたことや、日本でも診断ができる病院が増え、受診する人が増えたことも要因の一つと思われます。

日本企業の取り組み


(出典:イノベーション創出加速のためのデジタル分野における「ニューロダイバーシティ」の取組可能性に関する調査)

ニューロダイバーシティに取り組むべき理由

(出典:イノベーション創出加速のためのデジタル分野における「ニューロダイバーシティ」の取組可能性に関する調査)

近年の情報通信技術の進化には目を見張るものがあります。コンピューターの性能や通信や作業速度は日を追うごとに向上しています。
20年の間に技術進化は私たちの生活まで変化させました。そしてこれからの20年を考えると、デジタルが私たちに及ぼす影響は益々高くなると予想されます。

日本は、障がい者雇用において先進国の中で後れを取っています。
発達障がい人材の未活躍が解消できずにいると、生産年齢の人口の減少により、2030年時点の国内IT人材の需要数は192万人であり、予想される供給数は133万人ですから、79万人不足すると言われています。

そうした時代の変化の中で、ITに親和性の高いニューロダイバーシティの人材活用は、企業が持続的に成長するための戦略の要になると言えるでしょう。

 

 

参考:経済産業省「ニューロダイバーシティの推進について」
イノベーション創出加速のためのデジタル分野における「ニューロダイバーシティ」の取組可能性に関する調査

筆者:セーフティネット産業カウンセラー、公認心理師

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