こころとからだの健康
今年はどのような年にしたいですか

新年を迎え、ここからまた一年が始まっていきます。皆さんは今年をどのような年にしたいですか。今回は心理の専門家の視点から新年の抱負の立て方について解説してまいりたいと思います。
新年の抱負と目標設定
新年の抱負。これは年始にその年の目標を立てるということです。これからどのような1年を生きていくのか、明るい未来を想像して目標を立てる時にはワクワクします。そして実際にそれが達成された時には、「やればできるんだ!」と大きな充実感を得ることができるでしょう。
目標設定の落とし穴
一方で、目標を達成するということはなかなか難しいことでもあります。
目標を立てた直後はやる気満々だったとしても、時間が経過するとその活力は失われ、行動を中断してしまうことも少なくありません。
時にはすぐに飽きてしまうこともあるでしょうし、実現が難しいと判断して途中であきらめてしまうこともあると思います。
途中であきらめたり、飽きてしまうという中断行為は、単に「目標に届かなかったな」で終わる話ではありません。時にこれが失敗体験として認識されてしまい、「どうせ出来ない」、「どうせ無駄だ」というような無力感を生じさせる要因になり得ます。加えて、その気持ちは他の活動にも波及し、生活全体の満足度が低下するという事態にもなりかねないのです。
せっかく立てた新年の目標が逆効果となり、その年の生活を暗くしてしまう。これはとても残念なことですね。それを防ぐためにも、適切な目標設定の在り方を知りたいところです。
実はこのようなお話は心理学における目標設定というモチベーションに関係する内容になります。学術的な面からより良い生活を目指してアプローチをしてみましょう。
目標は自分自身で決めよう
まずは代表的な理論からご紹介します。
心理学者のデイシとライアン(2002)によれば、目標に向けて頑張るためには“自分で目標を立てる”ことが良いとされています。
人には自分で自身の行動を調整したいという欲求があり、それを満たすことがモチベーションを高めるというのです。他の人から「こうしなさい」と与えられるのではなく、自分自身で主体的に考え、未来を描いていくことが大切です。
また、心理学者のド・シャーム(1976)も「オリジンポーン理論」の中で、同様のことを言っています。これによると、自分がオリジン(チェスのプレイヤー)であると認識するとモチベーションが高まり、自分がポーン(チェスの駒)であると認識するとモチベーションが下がると説明しています。
つまり、自分がゲームを回している側であると認識すればやる気が出てくるが、自分は誰かに駒使いされる側なのだと認識するとやる気が無くなるということです。
例えば、子供に宿題を「早くやりなさい」と言った時に、「今やろうと思ったのに」という言い訳をすることがありますね。言われた方は自分のタイミングで、自分の意思でやりたいと思っているのに、その前に指摘されてしまうと「言われたからやる」という構図になってしまいます。そうすると、「やりなさい」と言われた途端に興ざめしてしまうということが想像できますね。
以上のことから、目標はご自身で主体的に設定することが大切だということが分かります。
どのような目標を立てればいいのか
それでは、自分自身でどのような目標を立てればよいのでしょうか。こちらも心理学者の話がありますので、そちらを引用しながら概観していきたいと思います。
ある程度実現可能で、具体的な目標を立てよう
心理学者のロックとラザム(1984)は、目標設定理論において“ある程度実現可能で、具体的な目標を立てる“ことがよいといいます。
まず、人は実現可能な目標でないとやる気が出ません。到底たどり着くことができないゴールだとしたら、目指している途中で嫌になってしまいますよね。そもそもそれを目指そうとすら思わないかもしれません。
一方で、簡単すぎる目標もやりがいを感じられずにやる気が出ません。失敗するかもしれないが成功するかもしれないというある程度挑戦的な目標設定がモチベーションを高めるというのがわかります。
そして、その目標は具体的であればあるほど良いと言えます。何をどうするのかが明確であり、測定することが可能なものにすることがポイントです。
例えば、ダイエットを想像してみましょう。「今年は痩せるぞ」と目標を立てても、何をどうすればいいのか、いつまでに何キロ痩せるのかが分かりません。それよりも、食事制限と運動プログラムを組み合わせて、何か月後までに、何キロ痩せると目標を立てた方がよりイメージがつきやすく、それに向かって頑張りやすくなると考えられます。
よりモチベーションを高めるために
加えて、さらに効果を高める要因についてもお伝えしておきましょう。
一つ目は自分で「良い目標だ」と思えることです。何かの行動を起こす時には納得感というものが重要であることが分かります。
二つ目は努力の結果(進捗)が定期的にフィードバックされることです。ダイエットの例で考えてみましょう。ダイエットを始めてから体重をずっと見ないのではなく、定期的に測定するということですね。こうすることで、目標を達成したか否かということだけでなく、目標を達成するまでの過程を見ることができます。少しずつ体重が減っていっていることを見れば、いずれは目標にたどり着くことがより現実的なものとして予想できますし、努力している結果がきちんと表れていることがいつでも理解できるのがいいですね。
三つ目の要因は、新たな知識・技術を獲得しながらするということです。これは新しい方法を調べながらやると楽しいということですね。例えば、ダイエットに効果的な料理のレシピを調べて実際に作ってみる。脂肪燃焼に効果的な運動の仕方を調べて実際にやってみる。このように何が効率的かな?など考えながら、新しい知識を吸収し、技術を身に着けながら行うとモチベーションが高まると言われています。
今回は新年の抱負について、心理学的な視点から見てまいりました。このような知識は直接的に生活に影響を与えうるものだと思います。ぜひこちらを参考に、今年の目標を設定してみてはいかがでしょうか。皆様にとって、今年が良い一年になりますようにお祈りしております。
参考文献
・Edward L. Deci, Richard M. Ryan著 『Handbook of Self-determination Research』
・De Charms, R. 著 『Enhancing Motivation: Change in the Classroom』
・Edwin A. Locke, Gary P. Latham著 『Goal Setting: A Motivational Technique that Works!』
筆者:パソナセーフティネット臨床心理士、公認心理師







