研修

職場環境改善シリーズ Part1 ~ストレスチェック後の職場環境改善~

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ストレスチェック後の職場環境改善を進めていますか?
新型コロナ感染症も5類移行となり徐々に日常が取り戻せてきましたが、感染予防対策等の三密回避、在宅勤務、コミュニケーション不足、サポートの難しさなどの課題が顕在化してきたことで、メンタルヘルス対策はより重要になってきました。

職場環境改善を行うことは企業の努力義務

ストレスチェックの目的
ストレスチェック制度が50人以上の事業所において実施義務となったのは、2015年12月でした。

制度の第一の目的は、従業員本人が自分のストレスに気づき、不調を予防すること。つまりセルフケア力の醸成を促すことです。
第二の目的は、個人を特定しない形で集計した職場のデータを活用し、組織が職場環境改善を行うことです。

国は、個人結果を集計して分析した資料を「集団分析」と呼び、このデータを活用して職場環境改善を行うことを企業の努力義務としました。
(ストレスチェックについての省令(労働安全衛生規則)第52条の14)

職場環境とは?
職場環境には、「物理的」な環境だけではなく、職場の「人間関係」「コントロール度」「職場の支援」などが含まれます。

職場環境改善の有効性
近年の研究で、職場環境改善を実施することは、生産性の向上、従業員のメンタルヘルスに役立つことが分かってきました。
管理監督者や同僚と職場環境を見直す参加型のアプローチですすめると、職場のコミュニケーションや相互支援に良い影響があることも研究で確認されています。

【ストレスチェック後に職場環境改善を受けた従業員では心理的ストレス反応が改善(今村他、J Occup Health 2018)】
【職場環境改善の費用(主な費用は参加した従業員の間接人件費)に対して、生産性が向上して得られる利益は約2倍(吉村他、産衛誌 2013)】
【ストレスチェック後に職場環境改善を受けた従業員の6割が「有効」と回答(浅井他、産業ストレス研究 2018)】

職場環境改善に取り組む意義

「働き方改革」を実現する手段の一つ
「働き方改革」の推進のための長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のために、職場環境改善は一役を担います。
【「働き方改革」とは、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)https://www.mhlw.go.jp/content/000474499.pdf

「健康経営」を実現する手段の一つ
これまで企業は人を人的資源と捉え「人件費(コスト)」と考えてきました。けれども現在は、人を「資源」から「資本」と捉え、従業員のエンゲージメントの向上を通じて「人を活かす」という方向へ転換しています。
「働き方改革」により、ワークライフバランスの推進、コミュニケーションの促進による職場の活性化、長時間労働者の是正を目指します。
【健康経営の推進について 令和4年6月経済産業省 ヘルスケア産業課 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeiei_gaiyo.pdf

誰が主体となって検討するか?

営者主導、管理職主導、専門職主導、従業員参加 4つの型

上記、4つのアプローチがありますが、改善主体によってメリットや留意点が異なります。
職場の特性課題で選択することが大切ですが、最も効果があるとされているものは、「従業員参加型」と言われています。

【いきいき職場つくりのための参加型職場環境改善の手引き 2018改訂版https://mental.m.u-tokyo.ac.jp/old/1595.pdf

従業員参加型の実際

集団分析で読み解くもの
集団分析は、犯人探しではありません。
「どの部署の総合健康リスク値が低いのか?」という視点で読み解くと、管理職からの反発や従業員のネガティブな感情が想起されてしまいます。
大切な視点は、良いところ探しであり、上手く機能している理由や工夫を皆で共有し、全体の底上げを目指すことです。

お役立ち資料
職場環境改善をゼロから考えるのは、担当者様の負担も多く大変です。
厚生労働省の研究班が科学的な研究をもとに作成したマニュアルやアクションヒントのリストなどを参考に実施されると良いでしょう。

①これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引・・・(全体像がわかる)
②いきいき職場づくりのための参加型職場環境改善の手引き 2018改訂版
・・・(「従業員参加型の解説」、チェックリストあり)
③職場改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)(2004年版)
④職場環境へのポジティブアプローチ
・・・(より強みに焦点をあてたアプローチ、強みチェックリストあり)

①②③については、厚生労働省「こころの耳」からダウンロードが可能
https://kokoro.mhlw.go.jp/manual/
④:厚生労働科学研究費による「労働生産性の向上に寄与する健康増進手法の開発による研究」研究代表者:島津明人
https://hp3.jp/wp-content/uploads/2019/06/02.1.pdf

職場環境改善を進めていく上でのコツとしては、いきなり立派な計画を立てるのではなく、直ぐに、そして無理なく手が付けられる小さなことから進めていくことです。
「小さなことからコツコツと」で行い、効果を振り返り、やりっぱなしにせず、効果検討してPDCAサイクルにすること。
結果の良かったところにも着目し、モチベーションを維持しながら行いましょう。

 

筆者:セーフティネット産業カウンセラー、公認心理師

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