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「リテンションマネジメント(離職予防)」について考える

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近年、ダイバシティ化の加速、少子高齢化による労働人口の減少により、企業にとって財産である人材の流出、流動化が激化しています。(独)中小企業基盤機構「中小企業景況調査」によると、全ての業種で人手不足であり、特に建設業やサービス業において人手不足感が顕著に表れています。

更に「(株)日本政策金融公庫「全国中小企業動向調査」によると、「求人難」を挙げた企業の割合が、ここ数年で増加の一途を辿っており、大きな経営課題になっていることが分かります。

厚生労働省の「平成30年若年者雇用実態調査の概況」によると、若年正社員の「定着のための対策を行っている」事業所は72.0%(前回平成25年調査では70.5%)であり、正社員以外の若年労働者の「定着のための対策を行っている」事業所は57.1%(前回調査では54.2%)となりました。若年労働者を定着させるための対策を行っている事業所が増加していることがわかります。

厚労省はこうした人手不足の現状から「若者の確保・定着に向けた無料コンサルティング支援」事業等も行ってきました。しかしながら求人難を感じる企業は増加しており、いかに従業員の定着を維持できるかが企業の喫緊課題となっています。

そのような中で、今、注目を集めている言葉に「リテンション」があります。

~リテンションとは?~

リテンション(retention)とは、英語で「維持」「確保」「引き留め」の意味です。
リテンション施策とは、人材確保のための具体的対応策です。欧米諸国では「リテンション・マネジメント」が人事マネジメントの一部として認知されており、「リテンション・マネジメント」は、社員の流動化を抑止し、定着を促進し、社員がイキイキと継続して活躍するための人事管理手法を指します。

~人材流失の企業リスク~

人的資源管理論が専門の山本 寛(やまもと ひろし)氏(青山学院大学 経営学部 教授)によると、人材流失による企業の損失は、
1. コスト面 退職者が出た際のコストは採用コストを上回る など
2. 仕事面 引き継いだ社員の負荷、生産性への影響 など
3. 周囲の社員への影響 モチベーション低下 など
と多岐にわたると言います。
実際に相談室でお受けするご相談の中にも、中堅社員の退職により、残された社員から喪失感や意欲の低下などが語られることがあり、メンタルヘルス上の影響があることが窺えます。また引継ぎ業務により社員の負荷が増加する、新たに採用した社員への教育や熟練までのサポートなど、離職によるリスクは数え挙げればきりがありません。

~リテンション・マネジメント~

それでは、企業がリテンション施策を実施するにあたり、どのような観点で考えていけばよいのでしょう。
山本教授によると、離職を思いとどまる要素には、以下の4つの企業風土があると示しています。
1. 人を大切にする風土
2. ボトムアップ重視の風土
3. 多様な価値観を許容する風土
4. 縦のコミュニケーション

厚生労働省「平成26年雇用動向調査」によると、離職理由として挙げられる割合は従業員規模間で割合に差があり、1~29人の企業では「収入が少ない」30~99人の企業では、「労働条件が悪い」100人~299人の企業では「定年・契約期間満了」でした。また小規模の企業ほど「会社の将来への不安」「会社都合」「職場の人間関係」の割合が高い傾向にありました。

「平成30年若年者雇用実態調査の概況」による調査で、新卒で就業した若者の離職理由(3つまでの複数回答)についてみると、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が 30.3%、「人間関係がよくなかった」が 26.9%、「賃金の条件がよくなかった」が 23.4%、「仕事が自分に合わない」が 20.1%の順となっています。

こうした調査結果から読み取れるリテンション施策としては、
1. 入社前の職務説明を詳細かつ具体的に行い、期待を不要に高めないこと
2. 雇用条件を丁寧に説明し、労働時間や休日、休暇の取得について同意を得る
3. フレックスタイム制や在宅勤務など職種に合わせた多様な働き方をサポート
4. 社内コミュニケーションの活性化を図り、人的サポート体制を確立する 特に在宅勤務を導入している企業においては、孤立・孤独予防対策を構じる
1オン1ミーティング、メンター制度など
5. 能力開発、教育制度を取り入れ、モチベーションの維持をサポート
などが挙げられるでしょう。

これまで弊社相談室においても、転職、離職を考えておられる従業員のお話を伺う機会が多々ありましたが、理由は単純、単独ではなく、複数重なることで決断をされる方が多いように思います。
そのため、欧米や一部の日本企業で既に実施されている「イグジット・インタビュー(退職面接)」も今後の組織改善のヒントとなります。退職者の忖度のない正直な意見を聴き取ることで、リテンション施策に活かすことができるでしょう。インタビューの際には、公平性が担保され偏見を持たない第3者(キャリアカウンセラーなど)に依頼することも一計です。

自分への価値を認めてもらえ、イキイキと働ける、心理的安全性の高い職場においては離職のリスクは低いと言えます。リテンションに有効な「社内での人との繋がり」を醸成するためには、縦の関係、横の関係、斜めの関係を構築することが大切です。コミュニケーションに必要不可欠な傾聴スキルの取得は基本になるでしょう。またリテンションを支える「4つの企業風土」やご紹介した例を参考に、御社に必要なリテンション施策を進めるとよいでしょう。

出典: 中小企業庁 「深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap1_web.pdf
参考:山本寛研究室 青山学院大学経済学部 特集「リテンション・マネジメント」
http://yamamoto-lab.jp/retention-management/
参考図書:「人材定着のマネジメント」 山本寛著
「連鎖退職」山本寛著
「組織のキャリア開発の観点からみたリテンション・マネジメントの国際比較」『青山経営論集』第44巻第3号 pp.133-152
http://yamamoto-lab.jp/wp-content/themes/yamamoto-lab/data/pdf/a03a902822ccc0c9c5dddd606d83cbc2.pdf

イグジット・インタビューのご依頼や1オン1ミーティング、メンターメンティ研修については、下記にお問い合わせください。

https://www.safetynet.co.jp/contact_us/

著者:産業カウンセラー
2021.7/27

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