こころとからだの健康

世界メンタルヘルスデーを知っていますか

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心の健康問題が注目される中で、メンタルヘルスに関わる国際記念日が制定されています。今回は改めて日頃のメンタルヘルスケアの重要性についてお伝えをしていきたいと思います。

世界メンタルヘルスデー

10月10日は世界メンタルヘルスデー
10月10日は世界メンタルヘルスデーです。心の健康問題に対する世間の意識の向上や、正しい知識の普及を目的として、1992年に世界精神保健連盟によって定められました。その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、現在では国際記念日とされています。

メンタルヘルスの諸問題
メンタルヘルスに関する課題は、国を問わず社会に大きな影響を与えています。世界保健機関は、世界のうつ病患者は3億人前後であり、認知症患者は5000万人、統合失調症患者は2300万人、双極性障害患者は6000万人と推計しています。日本では、精神疾患を有する患者数が増加傾向にあり、614万8千人となりました。

統計によると、生涯を通して5人に1人が「こころの病」にかかると言われています。この数字は、対岸の火事、他人事ではないことを示しています。
「こころの病」は特定の人がかかるものではなく、あなたご自身、ご家族、ご友人、同僚、上司・部下など、誰にとっても可能性があるということなのです。そしてこのデータが示している現実は、今は元気に見える人であっても、「そうなるはずがない」と確信をもって言えないということです。

これまでの人生において、深刻に悩んだことがないから「自分だけは大丈夫!」「今後もなることはないだろう」と信じている方も要注意です。
確かに、自分の健康に自信があり、意識的、無意識的にも、セルフケアができているからこそ心の健康が保たれている可能性もあるのですが、一度何かのきっかけでバランスを崩してしまい、ときには立て直しがきかなくなり、より深刻な状況に陥る危険性もあります。過度な自信や思い込みは大敵です。
日頃から自分のストレス対処方略について意識し、加齢や状況の変化に沿ってアップデートをしてみましょう。

他にも、リポート「ランセット・コミッション」によると、対策が講じられなければ、2010年から2030年にかけて世界経済に最大16兆ドルの損失が生じるとの研究結果が発表され、大きなニュースとなりました。
日本では、内閣府がある試算を公表しました。中規模程度の企業で30代男性がメンタルヘルス上の問題を理由に休職した場合、422万円のコストになると言っています(企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット概要版より)。これは個人の問題というだけでなく、社会全体にも影響するものであると認識することが大切です。

働く人のメンタルヘルスを良好に保つために
労働者には「自己保健義務」が課せられていますので、「自分の健康は自分で守る」ことが求められています。自ら進んでヘルスリテラシーの向上、ストレスへの気づきとその対処、健康診断の受診など積極的に取り組んでいきたいところです。また、日頃から作業配分、責任の分担、報連相を進んで行い、社員間のコミュニケーションをとり、気軽に相談できる関係が築けたらよいですね。ご自身の体調の変化に気付いたときには、すみやかに産業保健スタッフとつながり、セルフケアを心がけるとよいでしょう。

一方で、事業者・管理監督者には「安全配慮義務」が課せられていますので、「部下の健康を上司が守る」ことが求められています。共に働く、共に生きる人に目を配り、声掛けを行い、職場におけるチーム全体の心理的安全性を高める意識を醸成しましょう。メンタルヘルス不調を未然に防ぐためには、個人、チーム、企業が一丸となって進めることが肝心です。

メンタルヘルスと日常生活
現代では、精神障害やメンタルヘルスの問題の有無に関わらず、誰もが安心して生活できる社会の構築が求められています。メンタルヘルスは医療にお任せと考える人も多いのですが、これは病院だけでどうにかなる問題ではないことを改めて意識していただきたいと思います。

確かに、精神疾患の治療には医療の力が欠かせません。しかし、患者の多くは日常生活を営みながら通院することになります。つまり、医療にかかり、治療中であっても地域との関わりは途切れることはないということです。彼らは精神的な病を抱えながら社会の中で生活していくことになるのです。

また、その前後についても考えてみましょう。
メンタルヘルス不調になる前の段階では、自身で生活習慣を整えたり、自分に合ったストレス対処法を見出したり、誰かに相談したり、他者から気にかけてもらうことで予防していくことが大切になります。
一方で、治療後に社会に復帰することを考える際にも、無理をせず、自らの体調に気をつけながら、産業保健スタッフ、人事部など社内資源を活用し、新しい生活に適応することが肝心です。自らが進んで再燃、再発の予防を念頭にヘルスリテラシーを高め、これまでの働き方を見直し、安全に社会復帰していくことが大切になります。
このように治療中のみならず、その前後であっても、日常生活においてメンタルヘルスを保つための試みが大切であることがわかります。

厚生労働省が推奨する「4つのケア」は
・自分で自身の心の健康を保つためのセルフケア
・上司の立場から部下の健康を守る、相談を受けるというラインケア
・産業保健スタッフや人事担当部署などの社内資源によるケア
・クリニックや保健センター、EAPなど専門家による社外資源によるケア
などの活用があります。

こうしたケアを日頃あまり意識しない人もまだまだ散見されます。また、「こころの病」に対する社会的認知や理解が高まったとはいえ、未だに偏見や誤解を持つ人もおられます。
だからこそ、世界メンタルヘルスデーの10月10日には、メンタルヘルスについて関心を持ち、周囲の人と話し合ったり、考えてほしいと思います。正しい知識があれば、自身も周囲の人もサポートすることが可能になります。ぜひ、この機会を活用してください。
その行動が、世界メンタルヘルスデーを制定した意義であり、啓蒙に繋がると思います。

当日は全国のランドマークとなるような建物が世界メンタルヘルスデーのシンボルカラーであるシルバーとグリーンにライトアップされるそうです。とても綺麗な色の組み合わせですね。これを機に、心の健康とは何か、それをどのように保っていけばよいのかなど、ご自身や周囲の人々について、思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

筆者:パソナセーフティネット 臨床心理士、公認心理師

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