こころとからだの健康

メンタルヘルス ~ヘルスリテラシーを身につけ健やかに暮らす~

2023/02/27
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2003年5月に、厚生労働省は「国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の健康の増進を図るための措置を講じ、国民保健の向上を図る」ことを目的として、健康増進法を定めました。

健康増進法では、国民の責務として「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、 自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。」としました。
参考:https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/dl/s1202-4g.pdf

ヘルスリテラシーの定義

そこで注目されるようになった概念に「ヘルスリテラシー」があります。
ヘルスリテラシーは、「健康情報にアクセスし、理解し、使える能力」と定義されています。(引用:WHO用語集)

ヘルスリテラシーの4つの能力 入手、理解、評価、活用について

ヘルスリテラシーは4つの能力に纏められています。

①入手
インターネットやSNSの普及、健康番組、雑誌などの様ざまな情報が簡単に手に入るようになりました。こうした情報源から私たちは信頼のおける情報を探し出さなければなりません。
新型コロナ感染症の感染拡大が起きた2020年は大量の情報が飛び交い、何が真実なのか、正しい情報はどれか?迷われた方も多く、相談室にも新型コロナ感染症に関するお問い合わせが多く寄せられました。

②理解
入手した情報を正確に理解する能力です。
内容に専門用語、耳慣れない言葉などが含まれる場合、専門家の助言が必要になることもあります。入手したものを正しく理解するためには、読み書きの基本的能力が必要とされています。
また、収集したその情報は信頼性が高いものなのか、有効性はどうであるか、購買意欲を高めるためのマーケティング戦略ではないか?冷静に見極めつつ、内容を理解します。

③評価
情報の信ぴょう性を吟味し、効果について評価する能力です。
効果ばかりをうたい、リスクや副作用、副反応についての記述の情報がない。また、「絶対に○○!」「効果の保障」などの派手な宣伝文句ばかりが目に付くなど、信頼性はいかがでしょう。
自身の状況や症状、病状と照らし合わせ活用できるものでしょうか?
治験や臨床など科学的根拠は示されているでしょうか。

④活用
情報をもとに決断し、自らの行動や意思を決定する能力です。
決定には、時間的、経済的、労力的なメリットやデメリットが判断材料となります。
また、家族の意見や価値観、好みなどで判断を左右されることもあります。
意思決定については、判断後に迷うこともあるでしょう。
行動に移すためには、周囲の協力が必要なことがあります。周囲の理解を得られないときには、働きかける努力も必要になりますから、「かかりつけ医」「かかりつけ薬剤師」などの存在が大切です。専門家からの助言が周囲への働きかけの助けになることが少なくありません。相談先の確保をしておきましょう。

ヘルスリテラシー 必要な3つの場面

①ヘルスケア場面
疾病や病気への対処など医学的な問題に関する状況では、症状の医学的理解の促進やその対処法、更に医療先や医療者などの相談先の選択をする場面。

②疾病予防場面
ストレス対策や生活習慣病、加齢による疾病リスクなど病気の危険因子に関する予防をする場面。

③ヘルスプロモーション場面
自分の置かれた物理的環境や人間関係などの人的環境など、環境を健康的なものに変える働きかけ。家庭や職場、地域などの自身の周辺のリスクファクターに対する働きかけは、重要なポイントと言われています。

ヘルスリテラシーが低いと健康にはリスク

ヘルスリテラシーが十分ではないと、様々な影響を及ぼすことが明らかになっています

・疾病、治療、薬などの知識が少ない
・行政から送られてくる「健康診断」や勤務先の法定健診などを利用しない
・糖尿病や痛風、高血圧、高脂血症など、長期間、または慢性的な病気を管理しにくい
・医学的な問題の最初の兆候を見逃したり、気が付きにくい
・職場でケガをしやすい
・本来必要のない救急サービスを要請しやすくなる
・死亡率が高くなる
・産業保健スタッフなどに自分の心配を伝えにくい
・ラベルやメッセージが読み取れない、理解できない

上記からも、低いヘルスリテラシーは医療費や救急受診の増大、健康診断の未受診、職場での事故、慢性疾患のコントロール不良による健康障害の原因などになると考えられています。
実際に経済産業庁の調査結果 「働く女性の健康応援サイト」によると、ヘルスリテラシーが高い女性ほど、月経や更年期にまつわる不調の際に仕事のパフォーマンスが下がる割合が低いことが調査からも分かっています。

健康経営にも関係

経済産業省が提唱する「健康経営」は、「従業員の健康保持・増進の取り組みが将来的に収益や生産性を高める投資である」という考え方です。
健康への投資は、事業戦略であり、経営的な視点でもあります。

さらに、人生100年時代を迎え、健康寿命を伸ばすことがクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を支える重要なポイントです。

ヘルスリテラシーを「知り」、ヘルスリテラシーを「高め」、健康を維持し、健やかな毎日を過ごしていただければと思います。

 

筆者:公認心理師、産業カウンセラー

 

(出典:働く女性の健康応援サイト
https://joseishugyo.mhlw.go.jp/health/menstruation.html
参考:予防医学とヘルスリテラシー
https://www.yobouigaku-kanagawa.or.jp/info_service/preventive_medicine/img/61/19-28.pdf

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