こころとからだの健康
セルフケアに役だつ「脳腸相関」とは?

「脳腸相関」聞きなれない言葉ですが、実はセルフケアと大きな関りがあります。
脳と腸は互いに影響を及ぼし合っているという意味ですが、なぜこれがセルフケアに関わるのでしょう。解説して参ります。
脳と腸の関係について
脳の健康はメンタルヘルスに影響する
脳内物質であるセロトニンは、メンタルヘルスに大きく関わっています。
セロトニンは神経伝達物質であり、ストレスに対して効能がある精神安定剤と似た分子構造を持っています。セロトニンはやる気や幸福感に繋がるため「幸せホルモン」と称されることがあります。
人は強いストレスに晒されるとストレスホルモンであるコルチゾールが副腎皮質から急激に分泌し、セロトニンの分泌を抑制します。
また緊張や興奮によりノルアドレナリンも分泌されるのですが、こうしたホルモンの過剰な分泌は脳神経を破壊し、脳を疲弊させ、時には脳を委縮させると言われています。
脳への影響
脳が疲労すると様々な不具合を引き起こします。セロトニンの減少により、判断力や記憶力の低下、無気力、慢性的ストレス状態、イライラ、向上心の低下、協調性の欠如、不眠、食欲の減退、うつ症状などの症状が表れることがあります。
こうした状態に対処するには、神経を穏やかにしてくれるセロトニンの分泌を促すことが鍵になります。
セロトニンを増やすには?
幸せホルモンであるセロトニンですが、実は脳で作られるセロトニンは5%以下であることが分かりました。では、セロトニンは身体のどこで作られているのでしょう?
ここで腸の登場です!
体内のセロトニンの90%は腸に存在しています。
けれども腸内のセロトニンは直接脳に届くのではなく、セロトニンの生成に必要な必須アミノ酸のトリプトファンが自律神経を介して腸から脳に送られます。トリプトファンは食品から摂取することができます。後ほど詳しく解説します。
腸の役割
腸は、セロトニンの生成に関わっているだけではなく、免疫にも影響を及ぼしています。腸には体内の実に70%の免疫細胞があり、生体防御反応で私たちを守ってくれています。
近年の研究では、免疫細胞が脳の炎症を抑え、神経細胞を保護する効果もあることが分かってきました。このように脳と腸は互いに影響を及ぼしていることから「脳腸相関」の研究は世界中で進められています

セロトニンの分泌を増やす
ここまでの解説で脳と腸の関係はお分かりいただけたかと思います。
ここからは、メンタルヘルスに影響を及ぼすセロトニンを増やす方法について解説して参ります。
脳を整える
脳も身体の一部ですから、セルフケアが大切になります。
そのためには、睡眠、食事、運動、余暇のバランスを意識し、良い習慣を身に付けることが大切です。
熟睡感が感じられる質の良い睡眠、適切な睡眠時間は、脳疲労を軽減します。
良い睡眠を得られるヒントとして、例を挙げてみましょう。
1. 目が覚めたら朝日を浴びる
2. 朝食を摂る
3. 規則正しい食生活
4. 夕方の適度な有酸素運動
5. 温湯にゆっくり浸かる
6. 夜は間接灯を活用する
7. 寝室は適温で
8. 無理して眠ろうとしない
一方で、良い睡眠の妨げになるものも挙げてみましょう。
1. 寝る1時間前の喫煙
2. 夕方以降のカフェインの摂取
3. 強くて熱いシャワー
4. 寝る前の筋トレ
5. 寝酒(適量以上の飲酒)
6. スマホやPC、タブレット等を寝る前に使用する
7. つけっぱなしの照明
8. 2時間以上の寝だめ
いかがでしょうか?思いあたることはありませんか?
腸を整える
睡眠の解説にも規則正しい食生活は記載しましたが、腸内環境を整え、腸内細菌の多様性を高めることはトリプトファンの生成、利用効率を高めてくれます。
トリプトファンを生成してくれる食品として、例を挙げてみましょう。
1. 大豆製品(豆腐、みそ、納豆、豆乳、しょうゆなど)
2. 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)や卵
3. 肉類(鳥の胸肉、牛の赤身肉、ひれ肉、肩肉など)
4. 魚類(マグロ、カツオ、鮭、さんまなど)
5. ナッツ類(アーモンド、クルミ、カシューナッツなど)
食品は一つの種類を大量に摂るのではなく、バランスよく食べることが大切です。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」を心がけます。

腸には脳に次いで多くの神経細胞が存在していることが分かり、また感情にも深くかかわっていることから「第二の脳」と言われています。
脳腸、腸内細菌相関は今後、さらに世界中で研究が進むでしょう。
今回は、セルフケア、セロトニンについて解説をして参りましたが、今後も脳腸相関については、新しい情報を発信していきたいと思います。
筆者:パソナセーフティネット産業カウンセラー、公認心理師